
お迎えした保護犬が、散歩を怖がって歩かない…。
「犬って散歩が好きなはずなのに、どうして…?」
そんなふうに戸惑うのは、あなただけじゃありません。
だって私も、まったく同じ気持ちだったから…。
「こんなに怖がるのはうちの子だけ?」
そう思って、保護犬を迎えた11人の里親さんにアンケートをとってみたんです。
すると、9割の方が、「怖がることもあるけど、散歩は好き」と答えてくれました。
怖がりでも、外の世界を楽しめるようになっていく。
先輩たちの声から、そんな希望が見えた気がしました。
この記事では、保護犬が散歩を怖がる主な理由と、私自身が実践してきた“お出かけ練習”を6つご紹介していきます。

ちなみに…わが家の保護犬は今でも“なるべく家から出たくない派”です。それでも、一歩外へ出れば、散歩を楽しんでいますよ。
「家から一歩も出られない…」保護犬が散歩を怖がるのはなぜ?
「保護犬が散歩を怖がって、家から一歩も出られない…」
「やっと歩けるようになったけど、すぐパニックになって気が抜けない…」
“犬=散歩が大好き”というイメージと、目の前の現実のギャップに、「どうして?」「うちの子だけ…?」と不安になりますよね。
でも、それにはちゃんと理由があります。
それは、散歩が“はじめての体験”だからです。
たとえば、
・首輪をする
・リードをつける
・人と一緒に歩く
・外の音、におい、風景…
私たちには当たり前のことでも、保護犬にとってはぜんぶが未知の世界。
怖がって当たり前なんです。

次のパートでは、よくある理由を2つに分けてくわしくお話していきますね。
理由①|リード・首輪・外の世界…全部がはじめて

保護犬の多くは、そもそも“散歩が楽しいもの”だということを知りません。
ですので、首輪やリードをつけようとすると、怖くて抵抗してしまう子もいるのです。
でもそれは、決して悪気があるわけではなく、「こわいよ」「やめてよ」という、その子なりの精一杯の気持ちのあらわれなんです。
うちの子も、まさにそうでした。
・リードを手に持つと、部屋の隅にサッと逃げ込む
・手を伸ばすと、カプッと噛み付く仕草で威嚇する
・やっとのことでリードをつけても、身をよじって抵抗する
散歩に行く前からおたがい緊張して、汗がにじむような状態に、
「こんなに怖がるなら、無理に散歩なんて行かなくていいんじゃないかな…」
そう思ってしまう日も、正直ありました。
でも、今ならわかります。
この子にとっては、人と暮らすことも、外を歩くことも、すべてが“犬生はじめての体験”。
だから、怖くて仕方なかったんですよね。
理由②|物音・人の声・車の音…当たり前が怖い理由
私たちにとって当たり前の生活音も、保護犬にとっては“聞いたことのない不思議な音”ばかりです。
とくに、以下のような音は刺激が強く、不安を感じやすいようです。
・車の走行音やクラクション
・電車のゴトゴトという振動音
・リードの金属がカチャッと鳴る音
私たちには何気ない音でも、保護犬にとってはビクッとしてしまうほど怖いもの。
だから、“散歩=怖いもの”と感じてしまうのかもしれませんね。

うちの子も、車通りの多い道では小走りになることがありますよ。
【里親さん11人に聞いた】保護犬は散歩を怖がる?好きになる?

保護犬を迎えた11人の里親さんにアンケートを実施したところ、9割の方が「今は散歩が好き」と回答してくださいました。
・散歩の時間になると喜ぶ(6人)
・前は苦手だったけど今は好き(3人)
・散歩は好きだけどビビリ(1人)
はじめは歩けなかったり、怖がって外に出られなかった子でも、時間をかけて少しずつ慣れていった子が多いという結果になりました。

うちの子も、迎えて1年半が経ちましたが、実はまだ“散歩大好き”とは言えません。
それでも、少しずつ歩ける距離がのびてきています。
【実例】保護犬が散歩で怖がるものって?体験談から見えたこと
「散歩は好きになってきたけど、まだ苦手なものがあるんです」
そんな声も、里親さんからたくさん寄せられました。
実際に、保護犬たちが怖がるものを聞いてみると…
・子どもの集団やランナー
・車、自転車、バイク
・金属音や、ボールをつく音
・グレーチング(排水溝の鉄板)
・突然のはち合わせ
・後ろを歩いている人
・昨日までなかったもの
・普段しまっている扉が開いている など…
これらは、私たちにとっての日常ですが、保護犬にはビックリすることばかりなんです。
焦らずゆっくり、愛犬と一緒に安心できる道を探してみませんか?
そして、「今日は、ここまで歩けたね!」とよろこぶ…それだけで十分です。
怖がっていた保護犬が散歩好きに!ヘニムちゃんの変化と飼い主さんの工夫

散歩に行こうとすると、リードや首輪を怖がっていた元保護犬のヘニムちゃん。
今では散歩の時間になると、尻尾をフリフリしながら「行こうよ♪」誘ってくるほど、お外が大好きな子になりました。
そんなヘニムちゃんの変化の様子や、「散歩が怖い…」という時期に飼い主さんが実践した工夫を、くわしくご紹介します。
「うちの子も…」と感じている方にとって、きっと参考になるはずです。
迎えてすぐ|一生散歩できないかも…と思った日々
ヘニムちゃんは、保護犬カフェ®堺店の出身の元保護犬です。
お迎えした当初は、「一生、散歩に出られなかったらどうしよう…」と心配になるほど、外に出ることを怖がっていました。
・首輪もリードも、人が横に立つのも怖がる
・車やバイクにビクビクして、家の前から動けない
・いつも歩けていた道でも、突然怖くなり強く引っ張る
重機の音や花火をする人を見たことがきっかけで、それまで好きだった散歩コースが苦手になったってしまったことも…。
このように、一進一退をくり返しながら、少しずつ外の世界に慣れていったそうです。
怖い場所も、楽しいお出かけで自信に変えた

「いつも歩けてた道なのに、怖くて進めなくなっちゃった…」
そんな時、ヘニムちゃんの里親さんが実践したのは、“無理に歩かせる”ことではなく、「お外=楽しい場所」と伝えることでした。
具体的には、次のような工夫をされたそうです。
- STEP①
川やドッグラン、大きな公園など、ヘニムちゃんが楽しめそうな場所にお出かけして、外の世界の心地よさを体験
- STEP②
少しずつ自信を取り戻し、「お外っていいかも」と思えるように
- STEP③
気づけば、怖がっていた場所も歩けるように!
このように、「お外って楽しいね」と伝え続けたことで、今では散歩もヘニムちゃんの楽しみのひとつになりました。
歩かない保護犬も大丈夫!1日10分のお散歩チャレンジ
つづいて、筆者が実際に取り組んだ「1日10分から始めるお出かけ練習」をご紹介します。
とはいえ、いきなり外に出る必要はありません。
ひとつずつ、小さなステップを踏みながら、「歩けた!」「できたね!」という喜びを一緒に増やしていきましょう。

散歩よりもまずは、“おうちでの安心感”を育てることが何より大切です。

ステップ①|まずは家の中でリードに慣れる練習から
いきなり外に出るのではなく、まずは家の中で「リードに慣れる」練習から始めてみましょう。
このステップの目的は、首輪やリードに慣れてもらうこと。
もし付け外しを嫌がるようなら、つけっぱなしで様子を見るのもOKです。
大切なのは、「ついていても怖くないものなんだ」と、安心してもらうことです。
ステップ②|玄関から1歩だけチャレンジしてみる
家の中でリードに慣れてきたら、いよいよ“外の空気”を感じるステップです。
といっても、「さあ散歩に行こう!」と気合いを入れる必要はありません。
まずは
・ベランダ
・裏庭
・ウッドデッキ
・玄関ポーチなど
怖くなったらすぐ戻れる場所に出てみるだけで十分です。

たった1歩でも、思いきりほめてあげてくださいね。
ステップ③|怖がるなら抱っこで外の景色に慣れよう

できるようであれば、抱っこで家のまわりを歩いてみるのもいいですよ。
うちの子も、抱っこで2軒隣の広場まで行き、帰りだけ歩かせる…そんなところから始めました。
ほんの少しの距離でいいんです。
「ここまで歩けたね、やったね!」とよろこんでくれる人がいる…そのやさしさが、保護犬の怖い気持ちを少しずつやわらげてくれるのです。
ステップ④|静かな時間帯に散歩に出てみる
少しでも歩けるようになったら、散歩にチャレンジしてみてもいいかもしれません。
おすすめは、早朝や夜など静かな時間帯。もちろん、無理は禁物です。
怖がりな保護犬にとって、人の話し声や車の走行音は大きなストレス。
できるだけ静かな時間を選ぶことで、ちゃんと外の世界に慣れていけます。
はじめは1日1回でも、ほんの数分でも大丈夫。
少しずつ、“その子のペースで歩ける時間帯”を見つけていきましょう。
ステップ⑤|散歩の時間を少しずつ変えてみる
毎日、早朝や夜に散歩へ行くのは正直かなり大変ですよね。
だからこそ、慣れてきたら、少しずつ飼い主さんの生活リズムにあった時間帯に変えていきましょう。
ただし、ここでひとつ気をつけてほしいのが…
以前ご紹介した「保護犬が怖がるもの」には、なるべく出くわさないようにすること。
ここまで歩けるようになったんです。あともうひと息、慎重に、ゆっくり進めていきましょう。

じつは、うちも「せっかく慣れてきたのに、パニックになって振り出しに…」という経験があるんです…。
ステップ⑥|1日2回の散歩に挑戦!

散歩の準備を始めるとソワソワ…そんな様子が見られたら、外の世界に慣れてきた合図かもしれません。
そんなときは、1日2回の散歩にチャレンジしてみましょう。
今日は2回、明日は1回でももちろんOK。
大切なのは、ワンちゃんと飼い主さん、どちらも「散歩っていいな」と思えることです。
保護犬と並んで歩くこの時間はきっと、かけがえのない宝物になりますよ。

お迎えして1年半のうちの子は、やっとここまでこれました。
振り返ると、どの一歩も大切な思い出です。
散歩中に怖がってパニック!対処法は?
突然のパニックは、保護犬の「怖い!逃げたい!」サインです。
パニックになるとどうなるの?
怖がりな保護犬は、散歩中に予想外の刺激に出くわすと、突然パニックになることがあります。
そのときの行動は、大きく分けて次の3つです。
・急に方向を変えて逃げようとする
・リードを強く引っ張る
・その場で固まって動かなくなる
うちの子も、まさにこのタイプ。
音や人にびっくりすると、急にUターンして全力で引っ張るため、周囲の人や車にはいつも注意しています。
パニックになった時の対処法
パニックになって急に引っ張られたり、思いがけず方向を変えられると、飼い主さんもびっくりしてしまいますよね。
でも、そんなときこそ慌てずに落ち着くことが大切です。
まずは飼い主さんが落ち着いて、ワンちゃんが安心できる場所へそっと誘導してあげてください。
①怖がった場所から離れる
②落ち着ける場所でしばらく休憩
③緊張がとれたら、ゆっくり歩きはじめる
×飼い主さんがパニックになってしまう
×必死に逃げようとする子を強く引っ張って止める
「怖いことがあっても、この人と一緒なら大丈夫」
そう感じてくれるようになったら、パニックになる回数も減ってきますよ。

万が一に備えて「ダブルリードや迷子対策」もチェックしてみてくださいね。
まとめ|散歩を怖がっていた保護犬も、今では外の世界を楽しんでいます
保護犬が散歩を楽しめるようになるには、どうしても時間がかかります。
でも、あせらず向き合えば、必ずその子なりのペースで前に進んでくれます。
家から1歩も出られなくても大丈夫。
まずは、おうちでの暮らしに慣れて、飼い主さんとの信頼関係をゆっくり築いていきましょう。
じつは、わが家の子もお迎えから1年半経った今でも、散歩は1日1回の「しぶしぶ派」。
それでも、外に出れば尻尾を上げて歩き、キャンプや車中泊もへっちゃらになりました。
少しずつでいい。あなたのそばで、「お外って楽しいね」が増えていけば、それで十分なんです。

ゲームしたり、家でゴロゴロ過ごしたい人がいるように、犬にもインドア派がいたっていい。私はそう思っています。
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